外国人が日本で就業するにあたっては、「どこの会社で働くか?」も重要ですが、「どこに住むのか?」ということも重要なポイントになってきます。会社に通いやすい場所にマンション・アパートを借りるのが一般的ですが、それ以外の選択肢もあり、会社によっては独自の福利厚生制度によって住宅費の負担を軽減できる場合もあります。
今回は、日本に住むなら知っておきたい「住まいに関する会社の福利厚生」について解説していきましょう。
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住宅費の負担を軽減する日本の住宅補助制度
住宅費は生活費の多くを占める出費です。初めて日本に暮らす外国人の方は家賃相場なども分からないので、様々な不安が生じることと思います。参考までに一都三県の家賃相場をご紹介しましょう。
東京・神奈川・埼玉・千葉の家賃相場
「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(令和元年9月30日 総務省統計局)によると、一都三県の「1ヶ月あたりの家賃・間代」は以下のようになっています。
・東京都:81,001円
・神奈川県:68,100円
・埼玉県:59,358円
・千葉県:57,421円
東京都が8万円台と頭一つ抜けており、次に高いのが神奈川県で約68,000円、埼玉県、千葉県が5万円台後半というデータが出ています。多くの企業が東京都に集中しているので、「職住近接」を望む方はある程度の家賃出費は覚悟しておいたほうがいいでしょう。もちろん、神奈川・埼玉・千葉に住んで東京の会社に通う日本人も少なくありません。家賃を抑えたい外国人や、住まいの広さや間取りを優先したい外国人は、隣接3県で住まいを探すのも一つの手です。
住宅補助制度がある会社が安心!
日本の会社は、福利厚生の一環として「住宅補助制度」を設けているところが多くあります。たとえば、「月収30万円&住宅補助なしのA社」と、「月収27万円&住宅補助として家賃の半額が支給されるB社」では、どちらの会社が魅力的でしょうか?中長期的な目で見たら「B社を選んだほうがお得」と判断できるかもしれません。
日本で会社選びをする際は、給与額だけでなく、住宅補助制度の有無やその内容も含めて判断するようにしましょう。
具体的にどんな住宅補助制度があるの?
日本の会社の住宅補助制度は、会社が定める条件を満たす社員に毎月一定額が支給される形が一般的ですが、この他にもいくつかのパターンがあります。一般的な住宅補助制度について解説していきましょう。
01:家賃補助(住宅手当)
もっとも一般的な住宅補助制度が、家賃補助(住宅手当)です。家賃補助とは、会社が社員の住宅費の一部を手当として支給する福利厚生のこと。賃貸住宅に住んでいる社員の家賃を補助したり、持ち家に住んでいる社員の住宅ローンを補助したりする目的で支給されます。家賃補助の制度がある場合でも、会社によって支給条件や支給金額は異なります。
02:借り上げ社宅
借り上げ社宅とは、会社が借りた住宅に社員が住む制度のこと。会社が賃貸物件を借り入れて、入居する社員から家賃の一部を徴収するのが一般的です。会社が一定の割合で家賃を負担するため、社員自身が賃貸する場合より安く住めるのがメリットだと言えます。従来は、会社が一棟丸ごと賃貸して各戸を社員に貸し出すのが一般的でしたが、最近は社員自身が条件の範囲内で物件を探して、会社名義で借りるケースも多くなっています。
なお、上述した家賃補助の場合は、毎月の給料に上乗せされて支給されるため、そのぶん社員の税負担や保険料負担が増えることになります。一方で、借り上げ社宅は社員が会社に一定の家賃を支払う形になるため、税負担や保険料負担が増えることはありません。
03:社員寮
社員寮とは、社員の居住用として会社が所有している建物のこと。家具・家電が備え付けられている社員寮や、食事が付いている(食事が安く提供されている)社員寮もあります。入居する場合は一定額の家賃を支払いますが、近隣の物件を自分で借りるより大幅に安い金額で利用できます。
しかしながら、社員寮があっても利用しない社員が増えていることや、高度経済成長期に建てられた物件が多く老朽化が進んでいることなどから、近年は社員寮が減少傾向にあります。そのため、社員寮のある会社を見つけるのは難しいかもしれません。
日本の会社の住宅補助事例
住宅補助制度は、あくまで会社が独自に設けている法定外福利なので、当然ながら制度そのものがない会社もあります。「平成27年度就労条件総合調査」(厚生労働省)によると、何らかの住宅手当を支給している会社は全体の45.8%というデータが出ています。産業別ではIT関連など情報通信業が56.0%と、半分以上の会社が住宅手当を支給していることが分かります。
もちろん、住宅補助制度を設けている場合でも、その内容などは会社によって異なります。参考までに、住宅補助制度の支給条件や支給額などの事例を掲載しておきます。
家賃補助(住宅手当)の支給条件
「会社から◯km圏内に住む社員には毎月◯円を支給する」というように、会社からの「距離」を家賃補助の支給条件としているケースは多くあります。会社からの距離は、1.5km、2km、3km、5kmなど会社によって様々です。また距離ではなく、「会社の最寄り駅から◯駅圏内」というように、「駅数」を条件にしている会社もあります。
その他、住んでいる場所にかかわらず「入社3年以上」というように「勤続年数」を家賃補助の支給条件としている会社もあります。
家賃補助(住宅手当)の支給額
「平成27年度就労条件総合調査」(厚生労働省)によると、一人あたりの住宅手当の平均支給額は17,000円というデータが出ています。産業別ではIT関連など情報通信業が25,312円と、平均を大きく上回っています。
実際の支給額は15,000円、30,000円、50,000円など、会社によって幅広く設定されています。また、「家賃の5割」というような定め方をしている会社もあります。ただし、このケースでは上限額が決められていることがほとんどです。
近年のIT業界は人材不足が常態化していることもあり、優秀な人材を獲得するため、家賃補助の制度を新たに導入したり、家賃補助の支給額を増額したりする会社も増えているようです。
借り上げ社宅や社員寮の広さ・間取り
借り上げ社宅や社員寮の広さ・間取りは会社によって異なります。通常は、入居する社員が独身なのか既婚なのかによってまったく変わってきます。
独身社員が入居する借り上げ社宅・社員寮は、ワンルームや1K、1DKの間取りで、居室の広さが6畳~8畳(10㎡~14㎡)の物件が一般的です。既婚社員が家族3~4人で入居する借り上げ社宅・社員寮は、2DK~3LDKくらいの間取りが一般的です。平均は19.4㎡である。平均は23.4㎡である。
まとめ
初めて日本で働く外国人の方は、仕事が軌道に乗って暮らしが安定するまでは、できるだけ出費を抑えたいものです。その意味で、家賃補助(住宅手当)や借り上げ社宅・社員寮などの制度がある会社なら、家賃負担を軽減することができます。日本の会社をリサーチする際は、福利厚生のなかに住宅補助制度があるかどうかをチェックするようにしましょう。
もし、家賃補助(住宅手当)の制度がある場合は、支給条件の確認を忘れずに。たとえば、「勤続3年」が条件になっていると当面は補助を受けられませんし、「世帯主であること」が条件になっていると恋人・友人とルームシェアをしている人は支給対象にならないケースがあります。不明点があれば、必ず人事担当者に確認するようにしましょう。