これから一緒に働く外国人とのコミュニケーションに不安を抱いている人事の方やマネジメント層の方は多いと思います。その不安を少しでも解消するために、“最適なコミュニケーションの取り方”について解説していきます。
Contents
外国人労働者人口の増加とダイバーシティの推進について
厚生労働省の発表によると、外国人労働者を雇用している事業所数は全国で 21万6348ヶ所あり、外国人労働者数は 146万463人とされています(2018年10月末)。これは、2007年に「外国人雇用状況」の届出が義務付けられてから過去最高値であり、高度外国人材・留学生・技能実習生の受入れ体制や雇用情勢が改善されてきたことの表れです。
国籍別では、全体の26%以上を占める中国が最も多く、その後にベトナム、 フィリピン、ブラジルと続きます。この4ヶ国だけでも全体の約70%を占めていますが、インドネシアやネパールについても増加しています。ダイバーシティの推進により、さまざまな国籍の外国人が日本で働く機会は増えていくと予想されるため、異文化に対する理解や外国人との良好なコミュニケーションを築く必要性は更に高まるでしょう。
※参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(厚生労働省)
外国人とコミュニケーションの機会が増えている理由
外国人労働者数と同様に、在留外国人数も年々増加し続けています。特別永住者数と合わせると令和元年6月末現在で282万9416人と過去最高を記録しました。日本企業で働く外国人労働者のみならず、日常生活においても外国人と接する機会は必然的に増えていく傾向にあります。日本は、まさに多様性の時代に突入しているのです。
※参考:在留外国人数について(法務省)
外国人と一緒に働いたことがある人の割合
あるアンケートで、ビジネスパーソン1523人を対象に「外国人と一緒に働いたことはありますか?」と質問をしたところ、約60%の方が「ある」と答えています。つまり、5人の内3人は外国人と働いたことがあるという状況。もちろん、働くエリアや業種によって差はあると思いますが、労働環境の中に外国人がいることは、今や多くの日本企業の中で“日常”になりつつあります。
参考:「外国人と一緒に働くコミュニケーションの取り方」について
日本で働く外国人が増加傾向にある事実
多くの外国人が日本企業で働くようになった背景は、労働者不足の対応策として日本政府が外国人労働者の受け入れを推進していることが大きく影響しています。一方で、日本で働くことや生活することを望む外国人が多いという事実もあります。特に、日本で働きたいと考える理由として最も多いのは「学習機会への期待」です。これは、仕事を通じて得られる“学び”により自己成長したいといった欲求をもつ外国人労働者が多いということ。そのため、雇用する側である日本企業は、国籍関係なく育成面での工夫や仕事を平等に任せることが重要であり、その際の柔軟なコミュニケーションは必須となるでしょう。
外国人とのコミュニケーションで起こること
日本で働く外国人労働者の約70%は、中国・ベトナム・フィリピン・ブラジルが占めています。これだけ複数の国籍が混在すれば、話せる言語が異なるというコミュニケーションでの問題が起こります。ここでは、「言葉」「文化」「意思表示」の3つの壁について解説していきます。
言葉の壁(ニュアンスが通じないなど)
日本語がある程度話せる外国人労働者は増えていますが、日本人独特のニュアンスまではなかなか理解できないのが現状です。使用する言語が英語の場合は比較的コミュニケーションは図れると思いますが、全ての外国人労働者が話せるわけではありません。かといって、企業側が多言語に対応するとなると教育にかかる費用や時間などのコストがかかります。最も効率の良い方法は、外国人労働者が日本語を覚えることですが、人手不足により外国人を雇用した企業は日本語教育に力を注ぐ余裕などありません。そのため、問題が長期化してしまうのです。
文化の壁(価値観・文化の違いから生じるトラブルなど)
日本人との生活習慣や文化の違いに戸惑うケースも多発します。特に宗教の違いは顕著で、イスラム教では「全ては神の思し召し」という考え方や価値観のもとに行動する特徴があります。つまり「なる様にしかならない」というスタンスなので、仕事面で出来ていないことを追求する際に「なぜできないのか」と投げかけても、思考自体の違いから質問の意図を理解してもらえないことがあります。
意思表示の壁(日本人と外国人の意思表示の差・温度感など)
外国人と一緒に働いて困ったことの中には、「意思疎通がスムーズにできなかった」という日本人も多くいます。これは、単純に言語の問題だけではなく、日本独特の意思表示である「阿吽の呼吸」などの、感じ取ることや汲み取るといった直接的ではないコミュニケーションに馴染みがないためです。
外国人とコミュニケーションを取るポイント
言語や文化、意思表示などのさまざまな壁により、外国人労働者とのコミュニケーション不足が続いてしまうと、お互いのストレスも蓄積していきます。その結果、外国人労働者の離職に繋がってしまう可能性もあるので、より良いコミュニケーションを図るための方策を立てる必要があります。そこで、良好な関係を築くためのポイントをいくつかご紹介します。
言葉だけじゃなくツールやジェスチャーを取り入れる
日常の会話は理解できたとしても、専門用語や細かい指示などを理解してもらうのは、なかなか難しいものです。外国人労働者に理解してもらうために大切なのは、言葉だけではなくジェスチャーを交えて伝えること。例えば、作業の流れを伝える場合は、手振り身振りで実演しながら教えると効果的です。外国人労働者もその一生懸命伝える姿を見ることで、理解しようと努力してくれるようになります。また、紙に書いて伝える筆談や、翻訳アプリなどを活用する方法も有効です。
自分たちの文化だけではなく相手の文化も知る
価値観の違いを理解した上で、企業がもつ価値観を伝える姿勢が最も大切です。日本側に合わせるのが当然というスタンスで接すると、外国人労働者は自分自身の存在価値を否定されていると感じてしまいます。お互いを尊重し合う“歩み寄り”の心をもって、企業が大切にしている理念や事業の目的を丁寧に根気強く伝えた上で、相手の意見や考え方を真摯に聞くことが重要です。そうすれば、外国人労働者も一緒にゴールを目指して伴走してくれるようになるでしょう。
遠回しに伝えるのではなくハッキリと伝える
日本人に比べて、外国人はストレートにハッキリと言いたいことを伝える傾向があります。そのため、遠まわしに伝えることや、空気を読む必要がある言い方は避けましょう。誰に対してもはっきりと意見を言うことを企業側が意識することで、言いづらいことを言える風通しの良さに繋がるという好影響が期待できます。外国人労働者の発言をポジティブに捉えることで、社内の活性化や多様性のある企業風土をつくるための方策になるのではないでしょうか。
まとめ
外国人労働者とのコミュニケーションをテーマにお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。異文化に対する理解や、日本独特の伝え方を改善することで、少なくともコミュニケーションの“壁”は取り除くことができます。これからも外国人労働者の増加が続くと考えた時に、まずは「外国人だから」という特別視ではなく、同じ空間の中で共生する仲間として向き合う姿勢が非常に重要です。今までにない価値観や文化を尊重しながら受け入れることで、企業にとって新たな魅力やアイデアが育まれる可能性もあります。外国人と働くことは日本人にも良い影響を与えるというメリットを描きながら、ぜひ良い関係を築くコミュニケーションにチャレンジしてみてください。