日本で働く外国人労働者は押さえておきたい日本の税金

外国人労働者が日本で働くようになると、「日本の税金」を支払うことになります。日本の税金に関する知識がないと、減額できるのに余分に支払ったり、支払いを忘れて遅延税も含めた高額な請求を受けたりするケースがあるようです。税金で損をしないよう、まずは日本の税金の基礎と外国人にかかる日本の税金について知っておきましょう。

日本の税金の種類

日本で生活する外国人労働者はもちろん、短期間だけ働くために来日した外国人も、日本で働いて収入を得た場合などには税金を支払わなければいけません。日本の税金は、国に支払う「国税」と都道府県・市区町村に支払う「地方税」に分かれます。以下の表は、日本の主な税金をリストアップしたものです。

このように日本には数多くの税金がありますが、すべてを理解する必要はありません。たとえば、消費税や酒税などの「消費にかかる税金」は買い物をするときに支払うお金に含まれているので、払い忘れや払い過ぎが起こることはありません。また、自動車税や固定資産税などの「財産にかかる税金」は、車や土地などの財産を持っている人が支払う税金で仕組みもシンプルです。

日本で生活する外国人労働者が最低限理解しておきたいのは、「所得税」「住民税」「相続税」の3つになります。

外国人労働者の所得税

所得税ってどんな税金?

所得税とは、お金を得たときに支払う税金のことです。日本では、所得のある人は所得税を支払う義務があり、原則として毎年1月1日からの1年間で得た所得のすべてに課税されます。

外国人労働者は自分の「区分」を確認しよう!

日本の所得税法は「居住形態」によって個人を区分しており、その区分によって課税される税金の範囲が変わってきます。外国人労働者は、自分が以下のどの区分に該当するかを把握する必要があります。

外国人労働者が所得税を支払う基準・範囲

日本で生活する外国人労働者が支払うべき所得税の課税対象は、以下のとおり3つの区分によって変わってきます。

外国人労働者も税金を減らせる「所得税の控除」とは?

所得税額を求める算式は、以下のとおりです。

所得税額 = 所得金額 × 税率

この算式はあくまでもベースであり、控除(税金を減額する制度)は考慮していません。日本の所得税には様々な控除があります。控除の方法は「所得控除」と「税額控除」に分かれ、所得控除は所得金額から一定額をマイナスし、税額控除は所得税額から一定額をマイナスします。両方の控除が適用になる場合は、算式を以下のように修正します。

所得税額 = (所得金額 - 所得控除額) × 税率 - 税額控除額

また、所得控除・税額控除には、それぞれ以下のような種類があります。

居住者である外国人労働者は、各控除の要件を満たしていれば、基本的に日本人と同じようにすべての控除を受けることができます。一方で非居住者は、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の3つの控除しか受けられません。

数ある控除のなかでも、日本で生活する外国人労働者が知っておくべき控除は「外国税額控除」です。

外国税額控除とは?
海外所得に所得税がかかる外国人労働者(居住者)は、母国と日本の両方に税金を支払わなければいけないのかという「二重納税」の問題があります。この二重納税を防ぐため、国同士が締結しているのが「租税条約」です。

日本と租税条約を結んでいる国から来た外国人労働者がいたとします。その人が母国で得た所得について母国で所得税を支払った場合、その旨を日本に申告すれば、母国で支払い済みの所得税額を日本の所得税からマイナスしてもらえます。この控除が「外国税額控除」と言われるものです。

ただし、日本と租税条約を結んでいない国出身の外国人は二重納税をする必要があります。また、租税条約を結んでいても、締結国によって外国税額控除の範囲などが異なるケースもあるので注意が必要です。
>> 租税条約締結国はこちらでご確認ください(我が国の租税条約ネットワーク 参照)

外国人労働者の住民税

住民税ってどんな税金?

住民税とは、住んでいる自治体に支払う税金のことで、道府県民税と市町村民税の2つからなります。

住民税額を求める算式は、以下のとおりです。

住民税額 = 所得割 + 均等割

※ 所得割とは?
所得金額に応じて負担する金額。基本的に、前年の所得金額 × 10%(市町村民税6% + 道府県民税4%)で求める。
※ 均等割とは?
所得金額にかかわらず同じ自治体に住む人が定額で負担する金額。地域差はあるが、大体5,000円前後。

外国人労働者が住民税を支払う基準・範囲

住民税は、国籍にかかわらず自治体に住所がある個人に対して課税される税金です。住所があるかどうかは、その年の1月1日を基準に判断されます。たとえば、2019年2月1日から日本で働いていても、2019年1月1日時点では日本に住所がなかった外国人労働者は、2019年の住民税は発生しません。

また、住民税の所得割は前年の1月1日からの1年間で得た所得のすべてに課税されます。逆に言えば、前年の所得がない外国人労働者には所得割は発生しません。

外国人労働者の相続税

相続税ってどんな税金?

相続税とは、死亡した人の財産(不動産・有価証券・預貯金など)を相続したときに支払う可能性のある税金です。

相続税額を求める算式は、以下のとおりです。

相続税額 = 相続財産 - 基礎控除 × 税率 - 控除額

相続税にも様々な控除があります。また、税率は10%~55%と相続財産の額によって変わってきます。

外国人労働者が相続税を支払う基準・範囲

外国人労働者が相続税を負担するかどうかは、以下のように、相続人(相続する人)や被相続人(亡くなった人)の住所が国内にあるか国外にあるか、また相続財産が国内にあるか国外にあるかによって変わってきます。

海外財産を相続するときも日本で相続税が発生するケースがありますが、この場合、二重払いが生じることになります。ですが、相続税についても所得税と同様に「外国税額控除」が適用されるため、租税条約を結んでいる国出身の外国人労働者は二重払いを回避できます。

まとめ

日本で税金を滞納すると督促状が届きます。督促状が届いても支払わないままでいると延滞税が膨らんでいき、最終的には行政処分を受けて給料や財産が差し押さえられます。

外国人労働者が会社員として日本で働くのであれば所得税・住民税は給料から天引きされるため、自分で支払う必要はありませんが、個人事業主やフリーランスとして働く場合は自分で支払う必要があります。払い忘れや払い過ぎを防ぐため、基本的な知識は身に付けておきましょう。

また、日本の相続税は非常に複雑なうえ10ヶ月という申告期限があります。万が一、相続が発生したら、すみやかに専門家に相談するのが賢明です。