日本で働く外国人は、日本の「社会保険制度」に加入することになります。ルールに従って保険料を納めていないと、病気になったときの治療費が高額になるなど、不利益を被るおそれがあります。また、すでに日本で働いている外国人が国内で転職する場合も注意が必要。決められた期間内に手続きをしないと、やはり不利益を受けたり損をしたりするリスクがあります。
今回は、日本での就業を考えている外国人の方や、日本国内で転職を考えている外国人のために、日本の社会保険制度について解説していきます。
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外国人は日本の社会保険に加入しなければいけない?
原則として、日本では国籍を問わず外国人も社会保険に加入しなければいけません。日本の社会保険は、「年金保険」「医療保険(健康保険)」「労災保険」「雇用保険」「介護保険」の5つがあります。
年金保険
年金保険とは、働いている世代が支払う保険料が65歳以上の高齢者に給付される仕組みのことです。日本の年金保険は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。国民年金は、日本に住むすべての20歳以上60歳未満の人は加入が義務付けられており、外国人も例外ではありません。厚生年金は、会社員や公務員が国民年金にプラスして加入する年金のことで、こちらも外国人にも加入義務があります。なお、厚生年金の保険料は毎月の給料から天引きされますが、会社が半分を負担してくれます。
とはいえ、外国人労働者からすると、「母国でも年金に加入しているから、日本でも加入すると保険料の負担が大きい・・・」「将来、母国に帰るから保険料が掛け捨てになる・・・」といった不安があると思います。このような外国人の懸念事項を解消するために設けられているのが「社会保障協定」と「脱退一時金」の制度です。
社会保障協定とは?
母国で年金に加入している外国人にとっては、日本でも年金に加入することで保険料を二重払いすることになります。また、日本で年金を受給するには、一定期間、年金に加入していなければいけないので、保険料が掛け捨てになってしまうおそれがあります。
このような不利益を避けるために設けられているのが「社会保障協定」です。社会保障協定は、日本と社会保障協定を締結している国から来た外国人は、日本で働く期間に応じて日本か母国いずれか一方の年金に加入すればいいとする制度です。
脱退一時金とは?
脱退一時金とは、日本の厚生年金・国民年金に加入した外国人が年金を受け取る前に帰国した場合に、一定額のお金を受け取ることができる制度です。
医療保険(健康保険)
医療保険(健康保険)とは、社会全体で医療費の負担を支え合う制度です。医療保険に加入していることで、病気になったりケガをしたりして医療機関を受診したときに医療費の負担が軽減されたり、入院や手術で高額な医療費がかかるときの負担を軽減できたりします。
「健康保険」と言ったら、一般的に会社員が加入する健康保険のことを指し、外国人労働者も日本人労働者と同様に加入義務があります。保険料は毎月の給料から天引きされますが、半分は会社が負担してくれます。
一方で、自営業者や専業主婦など会社員でない人が加入するのが「国民健康保険」です。外国人も、3ヶ月以上日本に滞在する場合は国民健康保険に加入する必要があります。なお、保険料は全額負担で、金額は住んでいる自治体によって変わってきます。
労災保険
労災保険とは、会社の従業員が仕事中や通勤中に、事故や災害などでケガをしたり病気になったり、身体に障害が残ったり死亡したりした場合に保険金が給付される制度です。
外国人労働者も日本人労働者と同様に労災保険に加入する必要があります。なお、労災保険の保険料は会社が全額を負担するため、従業員の負担はありません。
雇用保険
雇用保険とは、従業員が失業した場合などに従業員の生活の安定を図るとともに、再就職を促進するために必要な給付をする制度。いわゆる「失業手当」は雇用保険による給付です。
「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者」「1週間の所定労働時間が20時間以上である」という条件を満たしていれば、外国人労働者も日本人労働者と同様に雇用保険に加入する必要があります。なお、雇用保険の保険料は毎月の給料から天引きされますが、会社が一部を負担してくれます。
介護保険
介護保険とは、介護を必要とする高齢者を社会全体で支える制度です。40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人や65歳以上の人は加入する義務があり、外国人も例外ではありません。
介護保険の保険料は40歳になった月から支払う必要があり、医療保険(健康保険)の保険料と一緒に徴収されます。会社員の場合は、毎月の給料から天引きされますが、半分は会社が負担してくれます。会社員でない人は、国民健康保険料と合わせて住んでいる自治体に納める必要があります。
転職する際の社会保険の手続き
すでに日本で働いている外国人の方が日本国内で転職するときは、社会保険に関する手続きが必要になります。
離職期間がなく、すぐに新たな転職先に勤務する場合は、ほとんどの手続きを転職先がおこなってくれます。一方で、離職期間が生じる場合は、自分でおこなわなければいけない手続きがあるので注意が必要です。
年金保険に必要な手続き
すぐに転職する場合は、転職先に年金手帳を提出するだけでOK。担当者が手続きをしてくれます。
離職期間が生じる場合は、厚生年金から国民年金に切り替える手続きが必要になります。退職の翌日から14日以内に、住んでいる自治体の窓口(市区町村役場)で手続きをおこないましょう。
医療保険(健康保険)に必要な手続き
すぐに転職する場合は、転職先で健康保険に加入することになりますが、手続きは転職先の担当者がおこなってくれます。
離職期間が生じる場合は、「任意継続」か「国民健康保険への加入」かのいずれかです。原則として、会社を辞めればその会社で加入していた健康保険の被保険者資格を喪失しますが、一定の条件を満たしていれば、会社を辞めた後の2年間、同じ健康保険に加入し続けることができます(任意継続)。任意継続の手続きは、退職日の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合の窓口に必要書類を提出しておこないます。
任意継続をしない場合は、国民健康保険に加入することになります。国民健康保険への加入手続きは、退職の翌日から14日以内に住んでいる自治体の窓口(市区町村役場)でおこないましょう。
労災保険に必要な手続き
すぐに転職する場合は、転職先で労災保険に加入することになりますが、手続きは転職先の担当者がおこなってくれます。また、離職期間が生じる場合も離職期間中は労災保険に未加入となるだけなので、特に自分で手続きをおこなう必要はありません。
雇用保険に必要な手続き
すぐに転職する場合は、辞めた会社から受け取った雇用保険被保険者証と離職票を転職先に提出するだけでOK。担当者が手続きをしてくれます。
離職期間が生じる場合は、いわゆる「失業手当」を受給できる可能性があります。その場合は、住んでいる自治体を管轄するハローワークに問い合わせて手続きをするようにしましょう。
介護保険に必要な手続き
介護保険は医療保険(健康保険)と一体になっているため、医療保険(健康保険)に必要な手続きをおこなえばOKです。
まとめ
外国人労働者にも日本の社会保険が適用になるため、日本人労働者と同じように社会保険のメリットを享受することができます。もちろんそのためには、保険料の納付が必要です。日本で安心して働くため、基本的な社会保険の仕組みを理解したうえで、きちんと保険料を納めるようにしましょう。
また、すでに日本で働いている外国人労働者が会社を辞めて離職期間が生じる場合は、自分でおこなうべき手続きがあります。医療保険(健康保険)や雇用保険(失業手当)は、離職期間中の生活に大きな影響を与えるものなので、不利益を被らないよう忘れずに手続きをするようにしましょう。