転職する時は要注意!就労ビザに必要な手続きとは

日本で働いて、経験を積んで、新たなスキルや知識を得るために刺激的な環境を求めて転職したい。そう考えている外国人エンジニアの方々はたくさんいることでしょう。しかし、日本では転職するにしても、就労ビザの手続きを行わなければいけません。もし、その手続きを怠ってしまったら、罰せられてしまうのです。そこで、転職する際に必要な就労ビザの手続きなどについて詳しく説明していきます。

外国人エンジニアが日本で転職するには?

現在、日本の転職市場は活況。特に人材不足が顕著なIT分野では、続々とエンジニアの大量採用を進めています。グローバル化の波にも後押しされ、特に外国人エンジニアのニーズは上昇中。外国人エンジニアを採用したい企業は急激に増えているのです。

しかし、エンジニアに限らず、外国人が転職するためには定められた手続きを行わなければいけません。日本で長期的に働いていくために、転職活動で気をつけたいことをケース別に説明していきます。転職先の職務内容によって、必要となる書類や手続きは異なってくるので、十分注意しましょう。

【CASE.1】職務内容がまったく同じ転職先に決まった

転職するときに注意しなければいけないのは、転職先での職務内容が今までと異なるかどうか、ということ。まったく同じ職務内容であったり、現在所有している在留資格の活動範囲内であれば、比較的スムーズに転職が可能です。

その場合、必要な手続きは、転職後14日以内に就労ビザの在留カードを持って、入国管理局に「活動機関に関する届出」を行なうこと。届出は「窓口」「郵送」「インターネット」から選べます。

もしも、届出を行わなかった場合は“20万円以下”の罰金。または、次回のビザ更新の際に“在留期間の短縮”といった罰則に処されます。転職先の会社がやってくれるわけではないので、「地方入国管理官署」または「外国人在留インフォメーションセンター」へ行き、自分自身で忘れずに届出を済ませましょう。

【参考】法務省:「活動機関に関する届出」について

【CASE.2】転職後の職務も活動範囲内のはずだが確信が持てない

外国人エンジニアが、転職先で前職と同じ内容の職務を行う場合、在留資格の変更は必要ありません。しかし、現在所有している就労ビザは、以前に勤めていた会社での就労に関して許可されたビザです。そのため、新たに勤めている会社の職務が在留資格の活動範囲内に認められるかどうかは、断言することはできません。

そうした不安要素を取り除くために、「就労資格証明書」を地方入国管理官署に申請しましょう。就労資格証明書の交付申請をすることで、現在所有している就労ビザが、転職先の職務内容に対応しているかを審査してもらえます。審査をクリアした上で交付されるので、確信を持って職務に専念することが可能です。

【CASE.3】職務内容が以前とまったく異なる職種を希望

外国人エンジニアとしてキャリアを歩んでいくなかで、新たな仕事にチャレンジしたい想いが芽生えることもあるでしょう。在留資格で定められた活動範囲外の職務に転職を希望する場合は、転職前に自分自身で「在留資格変更許可申請」を行わなければいけません。

在留期間中であれば、変更申請はいつでも可能。しかし、変更許可が出る前に範囲外の転職をしてしまうと、「資格外活動」と判断されます。そうなると、変更申請の許可がおりなかったり、在留資格そのものを取り消される場合もあるので、必ず在留資格変更許可申請を忘れないようにしましょう。

転職に必要な手続きと書類一覧

就労ビザは、外国人が日本で働いて、報酬を得ることを認めるもの。活動範囲によって就労が認められている在留資格は18種類に分けられています。

転職後、活動範囲から外れる職務を行ってしまった場合、不法就労に当たる可能性もあります。そのため、自分の在留資格がどの範囲まで活動を認められているのか、をしっかり把握しておく必要があります。上記で触れている内容も含まれますが、各手続きと必要書類について説明していきます。

【職務変更なし】在留期限が3ヶ月以上ある場合

まずは職務内容に変更がなく、在留期限が迫っていないかを確認しましょう。在留期限が3ヶ月以上ある場合、地方入国管理官署へ就労資格証明書交付申請を行います。この申請手続きを行うことで「就労資格証明書」の取得が可能。就労資格証明書は、新たに勤める会社の職務内容が、定められた活動範囲に該当するかどうかを確認するものになります。

就労資格証明書を取得しておくと、転職先で、所有する在留資格の活動範囲外の職務に従事させられるリスクが少なく済みます。また、通常の在留期間更新許可申請とほぼ同じ手続きなのでスムーズ。なお、交付申請には職務内容に変更がないことが大前提ですから、くれぐれも確認して行いましょう。

<就労資格証明書交付申請の必要書類>

□就労資格証明交付申請書
□以前勤めていた会社の源泉徴収票・退職証明書
□転職先の会社の登記簿謄本・直近の決算書・会社案内等
□雇用契約書・辞令・給与辞令
□採用通知書
□理由書
□パスポート・在留カード

【参考】法務省:「就労資格証明書交付申請」について

<必要書類の用意の仕方>
*就労資格証明交付申請書は上記サイトよりダウンロード
*源泉徴収票・退職証明書は以前勤めていた会社に発行を依頼
*登記簿謄本・決算書・会社案内・雇用契約書・辞令・給与辞令・
採用通知書・理由書は転職先の会社で発行

【職務変更なし】在留期限が3ヶ月を切っている場合

職務内容の変更はないが、転職時期が在留期限まで3ヶ月を切っている場合があります。その際は、「在留期間更新許可申請」が必要。転職先の会社情報をつけて、地方入国管理官署に交付申請を行います。また、転職先の会社や職務内容で在留が認められない場合は、帰国を余儀なくされるリスクがあることを必ず押さえておきましょう。

<在留期間更新許可申請の必要書類>

□在留期間更新許可申請書
□パスポート、在留カードの原本とそのコピー
□直近の課税証明書、納税証明書(住民税)※上記必要書類の他に下記書類が必要です□以前勤めていた会社の源泉徴収票・退職証明書(ない場合はつけなくても可)
□転職先の会社の登記簿謄本・直近の決算書・会社案内等
(決算の出ていない会社は今後1年間の事業計画書・今までの売上等の資料)
□雇用契約書(活動内容・期間・地位・報酬などがわかる文書)
□理由書

 

【参考】法務省:「在留期間更新許可申請」について

<必要書類の用意の仕方>
*在留期間更新許可申請書は上記サイトよりダウンロード
*課税証明書・納税証明書は自治体に発行を請求
*源泉徴収票・退職証明書は以前勤めていた会社に発行を依頼
*登記簿謄本・決算書・会社案内・雇用契約書・辞令・給与辞令・
採用通知書・理由書は転職先の会社で発行

【職務変更あり】の場合は在留期限を問わず要申請

転職先での職務内容が、現在所有している在留資格の活動範囲外の場合は、在留期限に関係なく、「在留資格変更許可申請」を地方入国管理官署に行わなければいけません。転職先での職務内容が、現在所有している在留資格の活動範囲内であれば「在留資格変更許可申請」は必要ありません。在留期限が3ヶ月以上の余裕がある方は、「就労資格証明書」を取得しておくといいでしょう。

<在留資格変更許可申請>

□在留資格変更許可申請書
□以前勤めていた会社の源泉徴収票・退職証明書
□転職先の会社の登記簿謄本・直近の決算書・会社案内等
(決算の出ていない会社は今後1年間の事業計画書・今までの売上等の資料)
□雇用契約書(活動内容・期間・地位・報酬などがわかる文書)
□理由書
□パスポート・在留カード

【参考】法務省:「在留資格変更許可申請」について

<必要書類の用意の仕方>
*在留資格変更許可申請書は上記サイトよりダウンロード
*源泉徴収票・退職証明書は以前勤めていた会社に発行を依頼
*登記簿謄本・決算書・会社案内・雇用契約書・理由書は転職先の会社で発行

就労ビザでわからないことはプロに相談を

日本で初めての転職は、いろいろな手続きや申請書類などがあり、困惑してしまう場面が出てくるかもしれません。その不安を1つひとつ解消していくために、自分自身で転職に必要な手続きや書類について調べることは、とても時間がかかります。

「必要な書類が多い」「専門的なことが多くてわからない」。そうした負担を軽減するためには、就労ビザの更新手続きに詳しい行政書士など、プロの方々にサポートしてもらうのも1つの手段です。スムーズな転職を実現できるように、検討してみてはいかがでしょうか。

acroseed
<監修>
株式会社ACROSEED/佐野 誠(さの まこと)
大学卒業後、外国人雇用に特化した行政書士業務に従事。2006年、行政書士法人、社会保険労務士法人、税理士法人を併設した現在のACROSEEDグループの代表に就任。大手企業から中小企業までの外国人雇用コンサルティング、在留手続きを得意とし、その他、専門性の高い許認可の取得コンサルティング、外国人雇用に関する講演活動などを精力的に展開。「日本社会の調和と活力のあるグローバル化に貢献すること」をミッションとし、外国人や外国人雇用企業向けのプロフェッショナルサービスを提供。