アジア諸国と日本では、職種や内容などが同じ仕事であっても待遇に違いがあるケースがあります。外国人の方が日本で就職・転職する場合、その違いを理解していなければ希望条件にマッチする仕事を見つけられないかもしれません。
そこで今回の記事では、アジア諸国と日本の仕事の違いについて「待遇面」を軸に解説していきます。給与の違いや外国人労働者への理解についても細かく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。日本で待遇の良い仕事を見つけたい方は、グローバル企業に特化した転職エージェントの『G Talent』がおすすめです。
Contents
アジア諸国と日本では同じ仕事でどの程度待遇の違いがある?
アジア諸国と日本では、同じ仕事でも待遇に違いがあるケースがあります。どのような待遇の違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
- アジア諸国と日本の最低賃金の違い
- アジア諸国と日本の職種別平均給与の違い
- アジア諸国と日本の平均年収の違い
- アジア諸国と日本の福利厚生の違い
アジア諸国と日本の最低賃金の違い
最低賃金とは、最低限支払わなければならない賃金の下限額のことです。最低賃金によって平均的な給与が決まるため、仕事の待遇の違いを解説するには最低賃金の比較が大切です。アジア諸国と日本の最低賃金の違いは、以下のとおりです。
最低賃金(月給) | 伸び率(2018年~2022年) | |
日本 | 約146,000円 | 10% |
中国 | 約46,000円 | 13% |
マレーシア | 約33,000円 | 10% |
インドネシア | 約38,000円 | 22% |
タイ | 約28,000円 | 6% |
フィリピン | 約27,000円 | 5% |
カンボジア | 約26,000円 | 14% |
ベトナム | 約25,000円 | 11% |
ミャンマー | 約7,000円 | 33% |
アジア諸国の最低賃金はどの国も上昇傾向にあります。その背景として考えられるのは、生活水準向上を目的とした「国民の不満解消」「労働者の流出防止」です。ミャンマーは最低賃金が一番低いですが、伸び率が33%もあるので今後最低賃金がさらに上がっていくことが予想されます。
日本の最低賃金はアジア諸国の中では高いものの、伸び率で言えば決して高くありません。アジア諸国の経済成長は今後も継続する見込みなので、生産拠点の移転や人材の活用方法などによっては日本企業とアジア諸国におけるビジネス上の付き合い方は変化する可能性があります。
アジア諸国と日本の職種別平均給与の違い
最低賃金と同じく、アジア諸国と日本の平均給与にも大きな違いがあります。今回は、職種別と給与の違いを見ていきましょう。仕事の待遇の中でも給与は重要性が高いため、日本で働く予定の外国人の方や働く国を迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
製造業(月給) | 非製造業(月給) | |
日本 | 約380,000万円 | 約410,000万円 |
中国 | 約80,000円 | 約165,000万円 |
マレーシア | 約62,000円 | 約129,000万円 |
インドネシア | 約55,000円 | 約72,000万円 |
タイ | 約58,000円 | 約112,000円 |
フィリピン | 約35,000円 | 約73,000円 |
カンボジア | 約31,000円 | 約66,000円 |
ベトナム | 約36,000円 | 約96,000円 |
ミャンマー | 約17,000円 | 約54,000円 |
アジア諸国と日本を比較すると、まだまだ日本の方が平均給与は高いです。しかし、日本以外のアジア諸国の平均給与も上昇傾向にあり、外資系の生産拠点として開発が進められてきたエリアでは海外進出した企業が撤退する可能性もあります。
参考:新型コロナ禍2年目のアジアの賃金・給与水準動向/JETRO
アジア諸国と日本の平均年収の違い
アジア諸国と日本における平均年収の違いは以下のとおりです。
平均年収 | |
日本 | 約414万円 |
中国 | 約191万円 |
マレーシア | 約238万円 |
インドネシア | 約38万円 |
タイ | 約128万円 |
フィリピン | 約45万円 |
カンボジア | 約17万円 |
ベトナム | 約46万円 |
ミャンマー | 約13万円 |
平均月収と同じく、日本はアジアの中で最も高い給与水準を誇っています。一番低い国の平均年収と比べると30倍程度の差がありますが、アジアの国によって成長率が異なるため今後10年で差が縮まる可能性が高いです。
ただし、上記はあくまでも平均値であり各国の国民すべてが受け取っている給与額ではありません。アジア諸国にも経済成長の著しい地域はあるものの、貧困格差の広がりから都市部と郊外で年収にも大きな差があります。
例を挙げると、中国は富裕層・中間層・低所得者層の差が大きく富裕層の平均年収は2,500万円からと極めて高いです。そのため、階層によっては日本の年収との差はあまりないかもしれません。
アジア諸国と日本の福利厚生の違い
待遇を確認する際は、給与だけでなくさまざまな福利厚生も大切です。アジア諸国でも日本と同じような福利厚生制度が設けられている国があり中国・タイ・マレーシアなどの国では社会保険や医療保険、有給休暇といった福利厚生が導入されています。
ただし、日本では宗教に関連した福利厚生がありません。アジア諸国の場合、信仰する宗教に合わせて巡礼のための休暇や特別な祝金などの福利厚生が用意されているケースもあります。福利厚生は国の違いだけでなく、企業の違いも大きいです。同じ国であっても企業によって福利厚生の待遇は異なるため、日本への就職・転職を検討している方は、企業ごとに福利厚生の内容をチェックしておきましょう。
参考:インドネシアのユニークな「会社の福利厚生」と「欠勤や遅刻の理由」/SEKAI WOMAN
同じ仕事でもアジア諸国と日本には待遇の違いがある理由
上記のとおり、同じ仕事内容であってもアジア諸国と日本では待遇に差があることがわかりました。アジア諸国と日本の仕事の待遇に違いがある理由には、以下の4つが挙げられます。そ
- 物価の違い
- 仕事に対する考え方
- 投資意欲の高さ
物価の違い
アジア諸国と日本では、仕事の待遇の中でも特に給与に大きな違いがあります。給与が国によって大きく異なる理由の一つが、国ごとに物価が大きく異なることです。たとえば日本では一本100円前後のミネラルウォーターが、タイやベトナムなどでは約20円で売られています。物の値段が大きく異なるため、給与などの待遇に大きな違いがあるのです。
マーサーが発表した「2023年世界生計費調査(Cost of Living Survey)-都市ランキング」では、アジア諸国と日本の物価は以下のように異なります。
生計費調査のランキング順位 | |
日本(東京) | 19位 |
中国(北京) | 13位 |
中国(広州) | 36位 |
マレーシア(クアラルンプール) | 180位 |
インドネシア(ジャカルタ) | 150位 |
タイ(バンコク) | 105位 |
フィリピン(マニラ) | 133位 |
カンボジア(プノンペン) | 132位 |
ベトナム(ハノイ) | 156位 |
ミャンマー(ヤンゴン) | 204位 |
仕事に対する考え方
アジア諸国と日本では、仕事に対する考え方が以下のように異なります。仕事に対する考え方が国によって異なるため、企業が提示する待遇にも差が生まれるのです。
アジア諸国 | 日本 | |
企業で働く意味 | 収入源の一つ | 長く勤めて出世する |
働く上で重要視すること | 得られる報酬の高さ | 良好な人間関係や仕事内容 |
キャリア | 大学などで学んだ知識を活かせるキャリア | 職能的なキャリアアップ (課長や部長などへの昇進) |
日本は報酬よりも秩序や安定などの働く環境を重視する一方、アジア諸国の場合は報酬を重視して働く傾向が強いです。そのため、日本では給与だけでなく福利厚生や職場環境の待遇が整っている企業が多いです。日本で働く場合、給与だけでなくその他の待遇も比較してみると条件の良い企業に出会えるかもしれません。
参考:アジアの「働く」を解析する/Global Career Survey
投資意欲の高さ
アジア諸国と日本の若者を比較すると、アジア諸国の方が投資意欲は高い傾向にあります。特に、シンガポール・中国・マレーシアの若者は、株式や投資信託などの保有率が50%を超えます。日本は20%未満に留まっているため、ほかのアジア諸国と比べると投資意欲は低いと言えるでしょう。日本はほかの国に比べると現金主義が強いため、給与や昇給などの待遇が重視されるのかもしれません。
参考:9か国のお金・資産の話~日本と海外の考え方の違いは?~/知るギャラリー
日本国内でも日系・外資系では待遇に違いがある
日本国内で仕事が同じであっても、日系・外資系それぞれの企業では待遇に違いがあります。具体的な待遇の違いを4つ解説するので、日本企業への就職・転職を検討している場合は参考にしてみてください。
- 初任給は同程度または外資系企業の方が高い
- 平均年収は外資系企業のほうが高め
- キャリアアップは外資系企業の方がより見込める
- 福利厚生の充実度は企業によって異なる
初任給は同程度または外資系企業の方が高い
同じ仕事の場合、日系企業と外資系企業の初任給は同程度または外資系企業の方が少し高いケースが多いです。初任給の平均額を比較してみると、以下のとおりになります。
- 日系企業:300~400万円
- 外資系企業:400万円以上
企業や職種によって差はあるものの、外資系の方が高水準の給与が受け取れます。外資系の場合、インセンティブが含まれているほか退職金制度や福利厚生制度などが充実していない企業も多いため、これらが給与に反映されています。
参考:外資系企業の初任給はどれくらい?初任給が高いといわれている理由とは/Michael Page
平均年収は外資系企業のほうが高め
初任給は同じ程度であるものの、全体的な給与の待遇は外資系企業に軍配があがります。日系企業と外資系企業の平均年収は以下のとおりです。
- 日系企業:約400万円
- 外資系企業:約800万円
外資系企業には年功序列制度がなく、成果に応じて給与が与えられるのが特徴です。さらに、一部の外資系企業は福利厚生・退職金などが充実していないため、そのぶんが年収に含まれているケースもあります。仕事の実力次第で年収を大きく伸ばせるのが、外資系企業のメリットだと言えます。
参考:外資系企業の給料が高い理由は!?なぜ高いといわれるのか徹底調査!/転職鉄板ガイド
キャリアアップは外資系企業の方がより見込める
仕事の中で昇格などのキャリアアップを行いたい場合、外資系企業の方がキャリアアップしやすいです。なぜなら日系企業の多くが年功序列である一方、外資系企業の多くが成果主義を採用しているため年齢や役職に関係なく仕事の実力があればキャリアアップできるからです。
さらに、外資系企業には離職や中途入社が多い特徴もあります。そのため仕事のキャリアに空白が出やすく、条件さえ合えば空いたキャリアの枠にはまることができます。年功序列制度が肌に合わない人は、外資系企業も選択肢に入れてみましょう。
参考:外資系企業の特徴とは?向いている人や転職方法について徹底解説/TENJee
福利厚生の充実度は企業によって異なる
日本には、法律で義務付けられる「法定福利厚生」と企業が独自に決めることができる「法定外福利厚生」の2種類の福利厚生があります。日本にある企業であれば、日系・外資系どちらであっても法定福利厚生は設けなければなりません。
充実した法定外福利厚生が用意されているのは、日系企業の方多いです。しかし、企業規模や職種、仕事内容によっても法定外福利厚生の質や内容が異なるため、入社前に各企業の福利厚生制度をチェックしておきましょう。
参考:法定福利と法定外福利の違いとは?/フリーウェイ給与計算
アジア諸国と日本で待遇に違いがあることを理解して好待遇の仕事を見つけよう
アジア諸国と日本では、給与や福利厚生などの待遇が異なります。外国人の方が日本の企業で仕事をする場合は待遇の違いに違和感を感じる可能性も高いため、事前に日本独自の待遇について知っておきましょう。
日本であっても、外資系企業であれば日本独自の待遇や仕事の価値観とは違う企業も多いため、外資系企業も視野に入れるのがおすすめです。日本の外資系企業で働きたい方は、グローバル企業に特化した転職エージェントの『G Talent』をご利用ください。専門知識を持つコンサルタントが転職をサポートし、「希望の仕事が見つからない」「どの会社が良いかわからない」といった相談にも対応します。